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ライフライン
地球温暖化は社会のみならず、建築もその枠組みの中で考えられるべき問題です。
1997年に京都議定書が発令されて以来、この問題は大きくクローズアップされ時代は変わりました。
ただデザインや快適性ばかりを追う時代は過ぎ、建築に求められる要求も一変したといってよいでしょう。
「地球温暖化について」の項でも触れたように、
この問題の建築の回答は、建物の長期寿命と資源の節約です。
そしてこれらを満たすものとして鉄骨建物を上げました。
それでは具体的に一体どういった建物がこれから生き延びてゆくのに耐えうる建物なのでしょうか。
つまり、建築のライフラインの設定です。
200年以上の耐久性があり、地震にも耐え、燃えず、
家族構成の変化や用途変更にも自由に対応が可能で、
設備廻りの交換が容易であり、最小限の資材で断熱・遮音・メンテナンス性に優れ、
伝統をふまえた多様なデザイン性があり、
しかもコストがかからず快適に住めるもの。
そのひとつが、軽量鋼板をともなった鉄骨建物です。
そしてそれを決定づけるものこそ、ハイブリッドウォールなのです。
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鉄骨建物について
鉄骨造の良さは、
1.最小限の部材で広い空間を確保でき、将来の間取り変更に充分対応できること
2.耐久性、耐震性、耐火性に優れていること
に要約されます。またこのことは「長期優良住宅」の認定基準をみたすものといえます。
短所はその軽量さによる遮音性ですが、これは、床を厚くすることやカーペットなどの仕上、
壁のグラスウール充填、
T-2級以上の遮音サッシュ等の使用により、
今の技術では充分克服が可能なものです。
鉄は200年以上耐え、強度があり、それ自ら燃えることがありません。
住み手にとっても今後特に重視したいのは1項目の性能です。
地球温暖化による資源の節約、
快適な空間への要求、そして将来の増・減築への対応は、
この構造の持ち味をさらに発揮できるものです。
つまり、柱・梁の基本的な骨組みさえ組んでしまえば、将来の家族構成の変更や、事務所等
どんな用途変更にも対応が可能です。
鉄骨建物には冷たいイメージがありますが、本当にそうでしょうか。
基本的な建物のライフラインは鉄骨ですが、人が触れる壁、床などは木や石などの自然の素材を使用し
人を包んでゆく考え方さえあれば暖かい空間を創り上げてゆくことができます。
そして、ローコストにしてメンテナンス性があり、建物に多様な変化をもたらすものが、
ハイブリッドウォールです。
最小限にして最大の効果を生み出す。
鉄骨建物にはその可能性があります。
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免震建物について
免震建物の良さは、
1.大地震時においても人や建物に全く損傷がない
2.損傷がないために平時において安心感が得られること
に要約されると思います。
1981年に建築基準法施行令において「新耐震設計法」が制定されました
。
これには、それまでの耐震設計に地盤や建築物の動的な特性と、
構造部材の終局強度に基づく大地震時に対する設計等の抜本的な改正が加えられました。
したがって1995年の阪神淡路大震災の時に倒壊した建物の殆どは、
この制定前に建てられた物です。免震建物はもちろん無傷でその後も充分機能しています。
では制定後の一般の建物と免震建物とではどこが違うのでしょうか。
ひとつは、大地震時に一般の建物は建物にひびが入るなどの損傷や倒壊が考えられ、
場合によっては、
直後生活や仕事に多大な影響を与えること。
もうひとつは、家具の転倒によって人の死傷や火災の発生が起こること
等が考えられます。免震建物の場合はこれらを全て免れることができます。
免震建物は、時代に合った工法として今後益々広がってゆくことでしょう。
弊社はこれまで免震住宅5棟を設計していますが、免震工事費は総額のほぼ1割になります。
つまり2000万の建物であれば約200万が免震工事に宛てられることになります。
この額が安いものなのか、高いものなのか。
以上の内容から、最終的な結論は建築主の判断によるものと思われます。
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地球温暖化について
建築が時代に対応したものである以上、この問題は社会問題ではなく、
時にかなった快適な環境を確保するために、具体策を示さなければならない課題です。
例えば国土交通省は2008年度の税制改革案として真っ先に、「地球環境に対応したくらしづくり」として
住宅の長寿命化促進税制の創設をうたっています。普通日本の住宅は30年を目安として建て替え
られますが、
建設時と取り壊し時の資源とエネルギーの環境負荷の軽減を行なうために、
住宅の長期寿命化を目的としたものです。
「長期優良住宅」と認定された住宅やマンションは、
登録免許税、不動産取得税、固定資産税等
において減税を施されます。
認定基準としては、構造体の長期耐久性のほか、大地震でも構造体の大きな補修なしで済む耐震性、
間取りの変更や内装・設備の維持管理のしやすさなどがあげられます。
またこれは中規模のマンションやオフィスの例ですが、2009年度施行予定の省エネ法改正案では、
業者に対する100万円以下の罰則規定が可能となります。
地球温暖化に対する建築の回答は、建物の長期寿命と資源の節約です。
この資源の節約には建設・ランニング・解体までのコストを含む全てが含まれます。
長期寿命には構造体の耐久性や耐震性が、資源の節約には
コストを含めた
間取りの変更や内装・設備の維持管理のしやすさが要求されます。
この合い矛盾するものを克服することは可能なのでしょうか。
可能です。その具体策として、ハイブリッドウォールを提案します。
同じ地球に住む建築家として、この問題を克服しゆく仕事をしてゆきたいと思います。
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